2022年11月17日

夢のつづき

「怖い夢を見たんだ。」

あなたはとても寂しそうにそう言った。

「どんな夢を見たの?」

私が聞くとあなたはもっと寂しそうに

「大切な人を亡くす夢。」

涙さえも流しそうなそんな声でそう言った。

「大切な人って誰だったの?」

もしかしたら自分の事かもしれない。

そんなことをわずかに私は想った。

涙を流しそうなほど、失いたくない大切な人。

だけどあなたは首を横に振った。

「誰だかわからない。でも、とても大切な人。」

「そう。でも、誰だかわからないのに、どうして大切な人なの?」

どこか残念な気持ちを抑え、あなたに疑問を投げかける。

「夢の中で、泣いてたんだ。顔も見えないその人のために。

 心がとても苦しくて。目が覚めた時にも泣いていた。」

そう言うと、またあなたは顔を曇らせた。

「そうなんだね。でも、それって悲しい夢かもしれないけど、

 怖い夢ではないんじゃないの?」

そう聞くとあなは私の目を真っ直ぐに見つめた。

その目はとても優しくて、でも寂しそうに私を映した。

「大切な人が誰だかわからないことが怖かった。

 もし、夢の誰かが君だとしたら、君を失うことが、

 そして、そんな君をわからない自分が心の中に

 いるかもしれないということが、何よりも怖かった。」

言い終わるか終わらないか、あなたは私を抱きしめた。

私はその背中を、何も言わずに抱きしめ返した。

夢の中の誰かが、私じゃなくても構わない

私にとっての大切な人が、間違いなくあなたならば。




にほんブログ村 ポエムブログ 優しい詩へ
にほんブログ村


詩・ポエムランキング


posted by bluerain at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩的小節 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック