2023年12月05日

嘘と真実

彼女に「好き」と言われれば
こちらも「好きだよ」と耳元で囁く。

ともすればそれは愛にも近い感情なのかもしれない。
お互いの目を見つめあい、お互いの体を求める。
抱擁と口づけを繰り返し、濃厚な時間を過ごす。

時に笑顔で他愛もない話をし
時に真剣な表情も見せる彼女は

たとえその短い時間の中でも
わずかに育まれる愛を感じる。

「ありがとう、またね」
「ありがとう、またね」

偽りの名前を呼び、偽りの名前に恋をする短い時間。

でも確かに一人の女性として彼女は存在する真実。
そしてその美しさと知性をもったその女性と
過ごした短いながらも愛のある濃密な時間もまた真実。


もし街のどこかで出会っても、
互いにきっと知らぬふりをする。
それがきっと彼女たちの嘘を守るためのルールだと知っているから。

扉を出てしまえば、どこにでもいる彼女に。

また僕は何かを求めてその店の扉を開ける。




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posted by bluerain at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩的小節 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月17日

夢のつづき

「怖い夢を見たんだ。」

あなたはとても寂しそうにそう言った。

「どんな夢を見たの?」

私が聞くとあなたはもっと寂しそうに

「大切な人を亡くす夢。」

涙さえも流しそうなそんな声でそう言った。

「大切な人って誰だったの?」

もしかしたら自分の事かもしれない。

そんなことをわずかに私は想った。

涙を流しそうなほど、失いたくない大切な人。

だけどあなたは首を横に振った。

「誰だかわからない。でも、とても大切な人。」

「そう。でも、誰だかわからないのに、どうして大切な人なの?」

どこか残念な気持ちを抑え、あなたに疑問を投げかける。

「夢の中で、泣いてたんだ。顔も見えないその人のために。

 心がとても苦しくて。目が覚めた時にも泣いていた。」

そう言うと、またあなたは顔を曇らせた。

「そうなんだね。でも、それって悲しい夢かもしれないけど、

 怖い夢ではないんじゃないの?」

そう聞くとあなは私の目を真っ直ぐに見つめた。

その目はとても優しくて、でも寂しそうに私を映した。

「大切な人が誰だかわからないことが怖かった。

 もし、夢の誰かが君だとしたら、君を失うことが、

 そして、そんな君をわからない自分が心の中に

 いるかもしれないということが、何よりも怖かった。」

言い終わるか終わらないか、あなたは私を抱きしめた。

私はその背中を、何も言わずに抱きしめ返した。

夢の中の誰かが、私じゃなくても構わない

私にとっての大切な人が、間違いなくあなたならば。




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posted by bluerain at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩的小節 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月07日

遥か

なんでもない会話はいつだって幸せだ。

「もしも生まれ変わっても、もう一度自分になりたい?」

「どうかな。なりたいとは思うけど・・・・」

「なんか微妙な言い方。私はなりたいかな。」

「どうして?」

「だって、今までそれなりに幸せだし、ちょっとだけ
 やり残したことがあるくらいで、生まれ変わったら、
 そのやり残しを出来るかなって。そしたら完璧。」

「やり残したこと?」

「まぁ、色々。子供のころのこととか。もっと好きなこと
 したかったとか。それで、結局あなたは?」

「やっぱり自分になりたいかな。」

「あなたはどうして?」

「君がもう一度君として生まれ変わってくれると
 わかっているなら、もう一度君と出逢える気がするから。」


会話の後の笑顔も、見つめ合う視線にも幸せは感じられる。

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posted by bluerain at 21:29| Comment(0) | 詩的小節 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月27日

あなたが嘘をつく時の癖を知ってる

だけどあなたはその事に気づいていない。

そして私もあなたに教えていない。

だから今、とても真面目な顔をして、

私に話をしていることが、

嘘だってことに私は気づいている。

「あのさ、聞いてる?」

「聞いてるよ。」

あなたが一生懸命話すほど、

私はなんだか笑ってしまう。

だけど、それをこらえながら、

あなたの話を聞いている。

他の誰かが気づいているかもしれないけど、

私とあなたの二人の時間の中でだけなら、

私しか気づいていない、あなたの癖を

あなたの可愛いその癖を、

あなた自身が気づくまで、私はずっと教えない。

「ほんとに聞いてる?」

「聞いてるよ。ちゃんと。」

笑いそうになりながら言葉を返す私の顔を

ほんの少し不機嫌そうな顔で見つめる、

あなたとの時間に幸せを感じている。



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posted by bluerain at 21:08| Comment(0) | 詩的小節 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月20日

もしも願いが叶うなら。

「一つだけ願いが叶うなら、何をお願いする?」

私がそう聞いた時

「世界平和」

真顔で答えるあなたが好き。

きっとその大きな愛は

私一人じゃ受け取り切れない。

だから二人の関係はまだ距離があって。

きっとあなたは本当に、

誰か一人を愛するって概念はないのかも。

そんなことを前に言ったらあなたは

「あるよ。」って笑ったけど。

優しい愛を誰にでも与えられるほどのあなたを

きっと独り占めしてはいけないんだね。

だけどあなたの言う「世界」の中に

私もきっと含まれているから。

今はそれで良しとしなきゃね。

そんなことを考えてたら「君は?」って

あなたに聞かれて。

「世界平和」って笑って答えた。




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posted by bluerain at 21:59| Comment(0) | 詩的小節 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月09日

温かな涙

「幸せ?」って訊かれたから

そっと首を横に振った

「どうして?」って訊かれたから

静かに君の目を見つめながら

そっと指でその目の涙を



「これで幸せ」


「ありがとう」って言った目に


僕を映すしずくが溜まる


「また幸せじゃなくなっちゃうね」


涙のままで笑った君を


「大丈夫」だよと抱きしめる




幸せは

こんなに近くて温かい








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posted by bluerain at 00:02| Comment(0) | 詩的小節 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする