こちらも「好きだよ」と耳元で囁く。
ともすればそれは愛にも近い感情なのかもしれない。
お互いの目を見つめあい、お互いの体を求める。
抱擁と口づけを繰り返し、濃厚な時間を過ごす。
時に笑顔で他愛もない話をし
時に真剣な表情も見せる彼女は
たとえその短い時間の中でも
わずかに育まれる愛を感じる。
「ありがとう、またね」
「ありがとう、またね」
偽りの名前を呼び、偽りの名前に恋をする短い時間。
でも確かに一人の女性として彼女は存在する真実。
そしてその美しさと知性をもったその女性と
過ごした短いながらも愛のある濃密な時間もまた真実。
もし街のどこかで出会っても、
互いにきっと知らぬふりをする。
それがきっと彼女たちの嘘を守るためのルールだと知っているから。
扉を出てしまえば、どこにでもいる彼女に。
また僕は何かを求めてその店の扉を開ける。

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